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『気血津液弁証』
今回11月21日に開催された中医薬研究会の京滋奈の定例会に参加させていただきました。
今回は、『気血津液弁証』で米倉先生の講演です。
人体を構成するのは正気であり生命活動の維持に不可欠な物質として体内にあります。
正気とは何かといいますと、
『気』『血』『津液』『精』『神』からなります。
今回は『気』『血』『津液』とその作用をご紹介させていただきます。
①『気』
気とは体の中をめぐっているエネルギーになります。
よく知られているのが元気が代表的ですがその他に、
宗気(そうき)・・・
呼吸中での清気と水穀精微から生じ、肺と共に呼吸、心に血の循環を良くする気
営気(えいき)・・・
水穀精微から生じ血の生成に直接関わり、血と共に脈管内を流れていて全身を栄養する気
衛気(えき)・・・
主に水穀精微から生じ、体表を保護し外邪の侵襲を防ぎ、汗孔の開合を調節します。体温の維持や皮膚・筋肉・臓腑・組織などに存在します。
臓腑の気、経絡の気・・・
経絡中をめぐっている気で血・津液・営気を流します。
②『血』
血とは水穀精微により生じ営気の働きで津液と微量な精が結合して脈管に入り赤色に変化することです。血液をさします。
この血は人体の臓腑に酸素と栄養を運びます。
五臓の肝の蔵血機能により量の調節、疏泄作用によりスムーズな運行、
五臓の脾の統血作用により血管から漏れ出さないようになります。
③『津液』
津:サラサラして薄く、流動性が大きく、体表の皮膚・肌肉・孔窮に分布、血脈に入り滋潤する。
液:粘調で濃く、流動性が少なく、脳・髄・関節・臓腑などの組織に注ぎ込み濡養する。
この二つが体の中から分泌してめぐる事により各臓腑などが働きやすくなります。
五臓の脾の昇清作用と腎の温煦作用により肺にあげられ肺の粛降機能と通調水道作用により三焦を通して全身に分布されていきます。
●気の失調と臓腑
①気虚証:息切れ、倦怠感、自汗、めまい、活動すると激しくなる、舌質淡白、脈虚無力などの症状が出やすくなります。
・心気虚・肺気虚・脾気虚など臓腑弱りが関係する症状もあります。
②気陥証:気虚に加え腹部に下垂張満感、内臓下垂、脱肛などの症状が出やすくなります。
③気滞証:臓腑や身体各部に生じ、その部位の張悶感、疼痛などの症状が出やすくなります。
④気逆証:喘息、しゃっくり、げっぷ、咳、頭痛、めまいなどの症状か出やすくなります。
●血の失調と臓腑
①血虚証:顔色は白く艶がない、めまい、口唇の色が淡白、舌質淡、脈細などの症状が出ます。
・心血虚・肝血虚など臓腑の弱りが関係する症状もあります。
②血瘀証:疼痛(固定痛、刺痛)、腫塊、青紫色、舌の瘀斑などの症状が出やすくなります。
③血熱証:心煩、口が渇くが水は飲みたがらない、鼻出血や皮膚に斑疹が出るなどの各種出欠症状、月経周期が早まる、舌質紅絳などの症状が出やすくなる。
●気と血の相互失調
①気血両虚:息切れ、自汗、倦怠感、顔色は蒼白又は萎黄、動機、不眠、舌質淡嫩、脈細弱などの症状が出やすくなります。
②気虚失調:歯肉又は鼻出血および各種の出血、息切れ、倦怠感、顔色は蒼白で光沢がないなどの症状が出やすくなります。
③気滞血瘀:脇胸部の張満疼痛、焦燥感、刺痛を伴う痞塊が出現し拒按、月経痛、舌質紫暗、瘀斑などの症状が出やすくなります。
④気随血脱;顔色は晄白、四肢の冷え、大きな汗が滴り落ちるなどの症状が出やすくなります。
●津液の失調
①津液不足:のどが乾燥、唇がカサカサ、口が渇いて唾液が少ない、皮膚の乾燥便秘などの症状が出やすくなります。
②陰虚証:手足のほてり、微熱、午後の潮熱、盗汗、舌質紅、少苔あるいは無苔などの症状が出やすくなります。
・心陰虚・肺陰虚・胃陰虚・腎陰虚など臓腑のよわりが関係する症状もあります。
気・血・津液のバランスが乱れ始めると身体も症状として出てきますので漢方薬で元気な時にこそ予防が大事ですね。
今回の定例会に出席させていただいてとても勉強になりました。
教えていただいた講師の先生には感謝です。
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9月度例会は他地区との合同開催による特別WEB定例会でした。
講演は2部に分かれており、内容は中医学講師による、
①「自己免疫疾患・クローン病の中医学的考察」
②「自己免疫疾患・関節リウマチの中医学的考察」
という内容で行われました。
その内容を一部ご紹介します。
①「自己免疫疾患・クローン病の中医学的考察」何暁霞先生
まず炎症性腸疾患について西洋医学的解説がありました。
炎症性腸疾患は、特異性と非特異性に分けられ、クローン病は非特異性のグループに分類されます。潰瘍性大腸炎もまた同じグループです。(ちなみに特異性なグループには、薬剤性や感染性の腸炎などが含まれます。)
クローン病は、好発年齢が10−30代の若い世代で起こり、小腸末端が後発部位ですが、小腸から肛門までのあらゆる部位に発生します。原因はさまざまな要因が関与を予測されていますが、現段階では不明です。
クローン病の発生機序は、
①腸粘膜の破壊、②マクロファージ、樹状細胞が抗原を補足、③炎症性サイトカインの放出、④炎症反応が誘導され、⑤さらに超粘膜が破壊されるというサイクルで起こります。
合併症は穿孔、狭窄、瘻孔です。
同じ非特異性のグループである潰瘍性大腸炎との違いは、潰瘍性大腸炎は表層の粘膜層のみに起こり、かつ直腸から大腸中心に発生するのに対して、クローン病は粘膜下の深い層にまで起こり、消化管のどこにでも発生する点です。
クローン病の主症状は、下痢、血便、腹痛、発熱、体重減少、肛門症状。
この病気の治療での目標は、治癒というよりも、寛解期間をいかに長く保つかで、方向性は中医学的治療でも同様です。
生活上の注意としては、低脂肪・低残渣食、疲れの軽減、冷飲を控える、適度な運動をすることです。
中医学的には、クローン病は、下痢、休息痢、腹痛、腸結、腸瘍、腸風と呼ばれます。
中医学的な病気の要因は、寒、湿、熱、気滞、瘀血で、関連する内臓は、心、肝、脾、胃です。
弁証としては、湿熱内薀。
この病気の方は舌が紅色、舌苔が黄色を示すことが多いようです。
治療薬は、脾虚湿盛、肝鬱脾虚、気虚発熱、気滞血瘀と分類される弁証ごとに使い分けていきます。
講演内で紹介された症例では、下痢のための内服薬とともに、肛門部の炎症に、通常内服するお薬を座浴で使用されたことが印象的でしたが、この二剤で良好な経過を辿っていました。
また、クローン病は免疫反応が関与しているため、β-グルカンを含む健康食品の有用性が示唆されており、関連する論文の紹介もありました。
このようにして、クローン病は中医学的な治療により寛解期間を延長されることが紹介されました。
②「自己免疫疾患・関節リウマチの中医学的考察」陶惠寧先生
関節リウマチとは、自己免疫疾患、リウマチ性疾患、結合組織疾患、膠原病であると説明されました。
それぞれに
・自己免疫疾患とは、免疫に異常がみられる疾病
・結合組織疾患とは、結合組織に病変が起こる疾病
・リウマチ性疾患とは、関節、骨や筋肉などに痛みと強張りを生じる疾病
・膠原病とは、皮膚や関節など膠原繊維の多いところに障害・炎症が起きる疾病のことであると説明がありました。
関節リウマチとは、原因は免疫の異常であり、病理的には炎症、起こる部位は関節(滑膜)であり、症状は関節の痛み・腫れ・こわばりから変形・機能障害が起こることです。
発症因子はさまざまな予測がされてますが不明で、余談ですがおもしろいことに環境因子として、歯周病の関与があるらしく、これは中医学的には、肝腎不足、脾虚、胃熱、肝鬱の状態と言えます。
関節リウマチは、骨・軟骨・靭帯の破壊、滑膜の炎症から軟骨以外の骨まで壊していきます。検査は、血液検査による、CRP、血沈、RF因子、抗CCP抗体の測定です。
関節リウマチの症状はまず、小さい関節(指の第二関節や手と足のつけ根、手首など)から始まります。
似たような病気に変形性関節炎がありますが、こちらはCRPが陰性であり、一方関節リウマチはCRPが陽性であることから、関節リウマチは全身性の炎症であることがわかります。
中医学的には関節リウマチは、痺症と言います。
病因は、風寒湿+湿熱、瘀血です。
弁証論治は、行痺、痛痺、着痺、風湿熱痺。
中国での診療ガイドラインでは、風湿痺阻、寒湿痺阻、湿熱痺阻、痰瘀痺阻、瘀血阻絡、気血両虚、肝腎不足、気陰両虚に分類され、それぞれに治療薬が決まってきます。
ただ関節リウマチの患者の舌は、淡白で、胖大であることが多いことから、このタイプわけでは多い型に偏りがあることがわかっており、治療において助けになります。
治療する医師によって治療法にも違いがあり、温腎通絡として治療する方もおられれば、清熱利湿として治療する方もおられます。
実際の症例の紹介がありましたが、経過に基づいて治療薬が紹介され、貴重な情報となりました。
また同時に関節リウマチの合併症(貧血、骨粗鬆症、睡眠障害、間質性肺炎)に対する対処法の紹介もありました。
関節リウマチの養生は、精神的健康、食事のバランス、禁煙、睡眠確保、積極的に運動などが勧められています。
中医学的な治療と西洋医薬品との併用はよく行われていることであり可能です。
関節リウマチの治療目標は、鎮痛、炎症抑制、軟骨破壊抑制、関節・骨破壊抑制です。
関節リウマチに漢方薬は、抗炎症作用、抗酸化作用、免疫調節作用、微笑循環改善作用、破骨細胞形成抑制作用が期待されています。
以上、2時間余りにわたって、お二人の演者から熱心な講演が行われ、また参加者も200名を超え、日本中医薬研究会(会員)の積極的に学ぶ姿勢が、オンラインながらも伝わってきた時間となりました。
何かお困りのことがありましたら、日々研鑽を積む、当研究会の会員店にご相談ください。
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6月の定例会では新型栄養失調について学びましたので、その中からみなさんに知ってもらいたいことをご紹介します。
新型栄養失調とは大きく分けて二つ。
一つ目が高齢者に多いたんぱく質不足。
それと全世代に多くなっているミネラル不足です。
飽食の時代において栄養素が不足していると言われると首をかしげてしまう方もいるかもしれませんが、加工食品の製造の過程によって、食材からミネラルが失われたり、食品添加物の影響でミネラルが吸収できなくなっているために、ミネラル不足を招いてしまうのです。
今回はカット野菜と添加物に使われるリン酸塩、それと純水についてご紹介します。
まずカット野菜。切る手間が省けるのでとても便利なものですが、野菜を細かく刻み、よく洗われて商品化されています。細かく刻まれて表面積が大きくなった状態の野菜をよく洗うと、ミネラルがどんどん溶け出して失われていくのです。外食産業でもよく使われているようで、外食続きではミネラル不足になってしまいます。
次にリン酸塩。リン酸塩は食べ物をジューシーさやぷりぷり感を出したり、白さを保つためにも使われている添加物です。PH調整剤と表記されている添加物にもリン酸塩が使われています。
そのリン酸塩は食品中のミネラルとよく結合します。ミネラルはリン酸塩に結合されると、体には吸収できないものとなり、そのまま便として出てしまうのです。
最後に純水についてですが、純水とはミネラルなどを除いたH₂Oばかりの水のことです。このH₂Oしかない純水が飲料水によく使われるようになっているのです。純水などと表記されるといかにも良い物に見えてしまいますが、実は栄養素のないただの水なのです。
ゆっくり料理をしている時間がないというご家庭では、外食や加工食品をよく利用しているのではないでしょうか?
子供がミネラル不足になると、落ち着きがなくなってしまったり、気性が荒くなってしまったりと、発達障害かな?と感じるような状態になることがあるそうです。
このような子供にミネラルを十分に与えたところ、2週間ぐらいから落ち着き始め、数ヵ月後には人のことを思いやった行動を取れるようになったという事例もあるそうです。
いかにミネラルが大切であるかがうかがい知れますね。
ではどうすればミネラル不足に陥らない食生活を送れるのでしょうか?
それは、カット野菜を使わずにご自分で調理することです。自分で調理すればリン酸塩はほとんど摂ることはありません。特に和食を自分で調理した場合、ミネラル不足になることがほとんどないそうです。
どうしても料理ができないという場合は、ミネラルの多い栄養補助食品やサプリメントを利用しましょう。
ミネラルはエネルギーを燃焼したり、神経や酵素を働きに欠かせない栄養素であり、不足すると体だけでなく、精神面においても悪影響がでてきます。
豊かな人生を送っていくために、しっかりとミネラルを補給していきましょう。
私たち京滋奈中医薬研究会のお店に来ていただければ、いつでも相談に乗ります。
心身の不調を感じていましたら、遠慮なくお問い合わせください。
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5月の定例会もコロナ禍の影響でWebにて開催されました。
今月は、中医学講師の仝選甫(トン センホ)先生に「新商品解説(桑螵蛸配合食品)の特徴と応用ポイント+高齢者の頻尿・不眠・便秘など」についてご講義いただきました。
始めに、今年1月に新発売となった「桑螵蛸配合食品」についてご講義いただきました。
桑螵蛸配合食品は、桑螵蛸、サンシュユ、沙苑子、補骨脂、欠実、サンヤク、レンニク、サンソウニン、牡蛎、珊瑚末の10種の原材料からなる、「補腎・健脾・養心・収斂」の働きを持つ健康食品です。
中国で尿失禁などに使われる「補原丸(※日本未発売)」や、尿漏れや夜尿症、遺精、おりもの、慢性喘息などに使われる「金鎖固精丸(※日本未発売)」の処方構成を元に作られ、尿漏れや夜尿症を中心とした、汗、よだれ、鼻水、不正出血、慢性下痢、遺精、慢性喘息、オリモノなどの“漏れ”のサポートを目的としています。
尿漏れに関する主な臓腑は、水をつかさどる(腎主水)“腎”と、腎と表裏関係である“膀胱”、水分代謝をつかさどり、エネルギーの源である“脾(胃腸)”、そして腎とペアで働く(心腎相交)“心”の4つです。
桑螵蛸配合食品は、補腎作用を持つ桑螵蛸・サンシュユ・沙苑子・補骨脂、健脾作用を持つサンヤク・レンニク、養心作用を持つレンニク・サンソウニン・牡蛎、収斂作用を持つ牡蛎・珊瑚末が上記4つの臓腑の働きをサポートします。
次に、ご高齢者の方の睡眠障害や便秘症への対応の仕方についてご講義いただきました。
睡眠障害に使用できる漢方薬には、「イスクラ酸棗仁湯顆粒」、「イスクラ天王補心丹T」、「イスクラ逍遙顆粒」、「イスクラ心脾顆粒」、「イスクラ温胆湯エキス顆粒」などがあります。
「イスクラ酸棗仁湯顆粒」は、養心安神作用を持ち精神を安定させる酸棗仁が主成分です。
「イスクラ天王補心丹T」には潤腸作用をもつ生薬(柏子仁や酸棗仁)が配合されており、不眠症と便秘がある方でも使うことができます。
「イスクラ逍遙顆粒」には調和作用がある生薬が配合されており、不眠症と月経不順や月経困難症を持つ方にも使えます。
「イスクラ心脾顆粒」は補血作用を持つ生薬が配合されており、不眠症と貧血や健忘がある方でも使えます。
「イスクラ温胆湯エキス顆粒」は、利湿作用を持つ竹茹や清熱作用を持つ黄連が配合されており、不眠症で食べ過ぎによる胃腸虚弱がある方にも使えます。
また、健康食品である「琥珀配合食品」には安神作用を持つ琥珀微粉末、短梗五加果、珍珠母が配合されており、上記の漢方薬と併せて使うことができます。睡眠障害に用いる漢方薬の服用タイミングとしては飲む1時間ほど前が効果的です。
便秘症に使用できる漢方薬には、「イスクラ清営顆粒」があります。血熱を改善する作用があるため、便秘症と肌荒れがある方などに使えます。
漢方薬は体質に合わせて使い分けることで最大の効果を発揮します。新製品も続々と発売され、今まで以上にきめ細かく対応できるようになりました。体調でお悩みの方は、ぜひお近くの中医薬研究会の会員店にご相談ください。
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4月度定例会は他地区との合同開催による特別WEB定例会で、中医学講師による「免疫を調整するための中医学対策」講義が開催されました。
免疫システムという概念は西洋医学のものであり中医学にはありませんが、中医学での「気」が免疫に相当するということを詳しく解説してくださいました。
Ⅰ. 新型コロナワクチンと抗体
新型コロナウイルスの治療法に抗体カクテル療法があります。同療法は2種類のウイルス中和抗体casirivimabとimdevimaを組み合わせて患者に投与する方法で、リジェネロン社が創薬したものです。アメリカ合衆国トランプ元大統領やジュリアーニ元ニューヨーク市長に使用され、両氏ともに回復・退院されています。
COVID-19に使用されるワクチンはmRNAワクチンという種類で、コロナウイルス表面の「スパイク蛋白」の設計図であるmRNAを投与し、体内でスパイク蛋白のみを作らせ、抗体を産生させます。抗体には病原体の無力化や重症化を防ぐ効果が期待されます。
Ⅱ. 抗体と非感染性疾病
抗体は感染性疾病だけでなく、非感染性疾病にも利用されています。以下に例を挙げます。
モノクローナル抗体「トラスツズマブ」(乳がん)、セツキシマブ(大腸がん)、リツキシマブ(B細胞リンパ腫)、ベバシズマブ(各種固体がん)、ベルツズマブ(乳がん)
免疫力が上がり過ぎて副作用(過剰免疫)が出る場合があります。この時は中医学で対応可能とのことでした。
Ⅲ. 抗体に関する中医学の思考
天然痘に対する「疫苗」(ワクチン)の歴史について解説がありました。疫苗は明時代に始まりました(1567~1572年)。記録によると疫苗には、天然痘患者の分泌物を児童の鼻に入れて抗体を作る方法や、痂皮を乾燥させたものを児童の鼻に吹き込む方法、患者の服を着せて軽く感染させる方法などがあったようです。18世紀に牛痘が始まるまで続けられていたようなので、ある程度の効果はあったのでしょうか。今のワクチンとは異なり軽く感染させる方法であり、現在では行われていないので、いわゆる副反応も大きかったことでしょう。
中医学では「抗体=気」と考えます。ウイルスなどの邪気(ワクチン)が体内に侵入し、正気(免疫)によって抗体が作られます。ワクチンは体外から取り込まれる「人工的な邪気」とのことでした。中医学的には免疫が過剰に亢進したり、六気・五志が過剰になったりすると「火」が発生します(自己免疫疾患、サイトカインストーム、感染症など)。免疫の過剰反応についても中医学で説明がつくようです。感染性発熱に対する中医学的治療は、表証に対する対応でOKとのことでした。
検査データがなく、弁証論治のみで行う場合をマクロ弁証、検査データを活用する弁証論治をマイクロ弁証と呼ぶそうです。初めて聞いた言葉です。新型コロナでは、抗体検査は陽性で臨床症状が無い患者が多いためマイクロ弁証を行います。検査データを収集して「気」の状態から今後の症状を予測し、治療方針を決定します。また、中医学の異病同治(関係性のなさそうな症状に同じ治療を施して治す)の考え方が、西洋医学の分子標的抗体治療に応用されています。
Ⅳ. 玉屏風散と抗体
これまで解説のあった免疫力「気」は、中医学で言うところの「衛気」に相当します。「衛気」を補うのに優れている玉屏風散を、感染やアレルギーを予防するために使用できるかどうか、臨床研究が中国で行われているとのことでした。
免疫システムが妊娠時にどのように関わっているのか、また、着床障害に対する中医学の活用法について詳しく解説してくださいました。
I. 母胎界面の免疫と妊娠力
妊娠は非常にユニークな免疫バランスで成り立っています。受精卵の半分は女性由来ですが、残りの半分は男性由来です。しかし女性は受精卵を受け入れる場合に限って拒絶せず、妊娠が成立します。妊娠とは排卵(採卵)後、受精(授精)し、子宮に着床する過程のことです。着床した受精卵は子宮内膜を脱落膜化させて胎盤を形成し、母体の血管から栄養と酸素の供給を受けるようになります。このとき、母体と胎児の境界面における免疫細胞はどのように働くのでしょうか。
着床時における母胎界面の免疫細胞の割合は、NK細胞70%、マクロファージ20%、T細胞(THh1,Th2,Treg)10%です。子宮NK細胞(uNK細胞)は胎盤形成するのを助けます。さらに胎児へ血液供給し、胎児は攻撃しないという特徴を持ちます。T細胞ではTh1が優位になると流産しやすくなり、Th2が優位になると妊娠が維持されやすくなります。また、Treg(制御性T細胞)が妊娠維持を助けるため、Tregが減少するとヒト流産の原因となります。慢性子宮内膜炎では、形質細胞から長期的に浸潤されることによって着床障害が起きます。
まとめると、母胎界面では①uNK細胞の活性化②Th1/Th2バランスをとる③Treg細胞の機能向上④形質細胞の浸潤なし、を維持することが着床・妊娠維持を助けることに繋がります。
Ⅱ. 着床障害に対する中医学的治療
免疫異常と妊娠力の低下には関連性が認められ、免疫性不妊の罹患率は不妊患者中10~30%で、原因不明の不妊症のうち、免疫因子によるものは20~70%とのことでした。同定できる免疫性不妊因子には、抗リン脂質抗体陽性(APS)、抗精子抗体(AsAb陽性)、遮断抗体陰性、形質細胞陽性(CD138+、CD38+)などがあります。免疫性不妊は複雑で150種類以上の疾病に関連を持ちます。
着床障害に対する中医学的治療法は瀉法が多かったものの、最近は補法に代わってきています。uNK細胞、Th2細胞、Treg細胞などの機能を強化する中医学的な対応原則は、補腎・健脾・補血です。また、着床障害の原因になる形質細胞の浸潤を抑え、子宮内膜炎を改善するための中医学的な対応原則は清熱解毒です。このように、着床障害に対しても中医学的治療が有効であることが分かりました。
<まとめ>
現代医学による検査などが中医学に応用されたり、その反対に中医学の考え方が現代医学に利用されたりするようになってきています。医療の進歩によって、中医学の妥当性が明らかになってきている証拠ではないでしょうか。自然現象を観察することによって生まれた中医学の概念は、決して現代に通じないものではなく、人も自然の一部であることを思い出させてくれます。免疫を強化するには気を補うことが重要で、きれいな水や空気、適切な食事に気を配ることが大切です。具体的な症状にお悩みの方は、京滋奈中医薬研究会をご利用ください。
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第2部は菅沼栄先生より「鬱症の中医薬治療」と題して御講義下さいました。
今年は新しい生活様式と言われ、心の疲労も訴える方が多い中、大変参考になる内容でした。。
前半は、精神的な病を中医学より分類し、五行の関係や虚・実に分け病因を詳しく学び、後半では応用できる方剤(漢方薬)について弁証論治(体質や現れている症状などから診断し治療方針を決めていく方法)から具体的な症例など紹介下さいました。
最後に、漢方を選び服用することに加えて、心や体の基礎となる薬膳などを含めた食養生や生活養生などもお話し下さいました。
心が不調になるとき、出来るだけ心と体が休めていける養生を心がけることも大切です。
先生がご紹介して下さいました以下の養生法を一部ご紹介致します。
1、 朝起きる時間を一定にする。早起き朝日を浴び腹式呼吸を行う。
2、 良質の睡眠をするために夕方以降にコーヒーや濃いお茶を控え出来るだけ夜更かししない。
部屋の照明を暗くし、就寝前にお風呂で体の芯まで温めてから入眠する。
3、 一日三食(朝は温かく消化しやすいもの、昼は栄養価の高いもの、夕方は胃腸の負担にならないように少なく食べる)
4、 排尿と排便をよくし、体の老廃物をきれいに排泄する
5、 一日一回笑うこと(少欲・抑目・静目)欲張らない・嫌なことを見ない、聞かない
6、 趣味を持つ
時に心の不調は様々な箇所に現れます。お悩みの方はお近くの中医薬研究会の会員店にご相談してみてください。
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引き続き、9月もコロナ感染拡大防止のため、web会議システムで定例会が開催されました。
第二部は、韓小霞先生による“症例から学ぶ中成薬と健康食品の応用”の講義でした。
韓先生のご経験から八つの症例が提示されました。
今回の定例会は、いつもとちょっと違ったスタイルで、定例会初の試みとしてweb会議システムの投票機能を使って、参加の先生方から治則や処方を投票してもらい、回答を集め、画面上で回答の投票結果を共有しながら韓先生の講義を受けるというものでした。
投票機能は、講義の途中に画面上で投票の質問への回答を求められ、参加者には投票用ウィンドウが表示されます。
個人的に、この投票機能を使うのが初めてだったことや自宅保育をしながら講義を受けたこともあり、治則や処方を考えている途中でタイムアウトになることがあり~はじめは操作に戸惑いましたが、すぐに慣れました。
今回の講義は、投票機能を用いたこともあり、いつも以上に臨場感がありワーキングママでも気負いなく楽しく受けられる定例会でした。
そして、今年は京滋奈中医薬研究会主催で予定していた屋外漢方イベントが残念ながら中止となってしまいましたので、代わりに下記のイベントが開催されることになりました。
11月1日(日) テーマは
“秋冬に多いお悩み「肌荒れ•乾燥」「冷え」対策”
Web会議システムを使ったイベントです!
お申込み方法は、
京滋奈中医薬研究会会員店店舗にて来週はじめ頃から配布予定のパンフレット、または「京滋奈中医薬研究会」のHPからもご応募いただけます。
〆切は10月25日(日)
どなたでも参加出来ますので
お友達をお誘いの上、是非
ご参加ください。
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今月も引き続き、Webにての定例会となりました。
第一部は、健伸堂薬局の米倉しく子先生による「四診3 聞診 問診 切診」のご講義でした。
四診とは「望診・聞診・問診・切診」の四つを合わせていうもので、弁証論治(体質や状態を判断し、処方を決定する)のためには欠かせない漢方独自の診察方法です。
米倉しく子先生が実際に相談を受けられた具体的な症例をもとに、望診、聞診、切診の情報の他に「どのような問診をしていけばよいか」など、全員参加のディスカッションの場ともなり、多くの先生方のご意見も聞くことができ、貴重な時間となりました。
四診から得られた情報を総合して疾病の症状と体質の特徴を整理、どのような弁証、治則、方剤を決定したのかを学ばせていただきました。
まずは「いつ」「どこで」「どこを」「どのような具合」をしっかり聞き、主訴の確定をする。
随伴症状から得られるデータ、生活習慣から得られるデータを正確に捉え、主訴に対する方向性を確定し、
お客様との意思疎通を図ること。直接関係のないように思えることも、重要なヒントになるということ。
多くの情報を集める問診の大切さをあらためて教えていただきました。
そして参加された先生方の意見を、多く聞くことができたこともとても勉強になりました。
今後も、より多くのお客様の体質改善のお役に立てるよう、漢方の処方だけでなく日々の養生などもお伝えしてまいりたいと思っております。
是非ご相談ください。
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6月もコロナ感染拡大予防のため、Web会議システムで定例会開催されました。
第一部は、米倉しく子先生による「四診~望診~」の講義。
四診とは、中医学独自の診察手法のことで、望診、聞診、問診、切診の4つの診法から成り立っています。この四診を必ず有機的に組み合わせて臨床運用することが大切です。
この四診から得られた情報を総合すれば、病気がどこにあるのか、その性質がどうか、どこから対応していくのかを正確に判断できます。
さて、昨年一年をかけて講義頂いた問診に続き、今年は望診から講義開始です。
望診は、字のごとく、視覚器官を駆使して観察を行い、病状を捉えることを指します。
その観察範囲は非常に広く、病人の精神・意識から、姿かたち、舌の状況、さらには分泌物、排せつ物の色質など多岐にわたります。
レントゲンみたいに直接見てはいませんが、外から得た多くの情報から、身体の中を見ようとするわけです。
長きにわたる中医学の臨床実践から得られた観察の要点は、非常に納得のいくものばかりです。
また、Web上でのグループディスカッションという初めての試みだった症例検討でも、出来る限り多くの情報を得て、総合的に判断することの大切さを教えて頂きました。
京滋奈中医薬研究会会員店でのご相談は、ちょっぴり長めにお時間を頂くことがあります。これは、出来るだけたくさん拝見して、出来るだけたくさんお伺いして、より正確な判断、よいご提案が出来るようにという想いの現れです。
ぜひお近くの会員店に足を運んで頂き、その熱い想いに触れてみてください。
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